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完成度の高さが裏目に出たアトレティコ。“不完全な”レアル、ふてぶてしい盾と矛の交換【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

レアルが使わざるをえなかったイレギュラー戦術

 ただ、もしレアルが攻守に完璧な循環を確立していたなら、決勝でヨソイキの服を着ることはなかったはずである。普段どおりでは勝てない相手だったから、イレギュラーな戦術を選択した。

 バルセロナとバイエルン・ミュンヘン以外に使う予定はないはずだったが使わざるをえなかった。最も華麗で最強であることを要求されるクラブではあるが、二者択一なら結果である。

 そういうときの底力は過去にも何度となく証明している。何とかしてしまうパワーでは、歴史的にマンチェスター・ユナイテッドと双璧だろう。ユナイテッドがクラブとして経験した「悲劇」という起爆剤もなしにやりおおせてしまう図々しさは格別といえる。

 アトレティコは堅守速攻のチームとして完璧だった。だが、それは自分の土俵に持ち込めたときの完璧さでしかない。

 アトレティコのように守り、レアルのように攻められれば、本当に完璧なチームといえるかもしれないが、アトレティコのように守るならレアルの選手では無理であり、レアルのように攻めるならやはりアトレティコは人選を変えなければならない。

 結局、レアルとアトレティコを合わせたチーム作りは現状では不可能。軸足はどちらかに定めなければならない。

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