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完成度の高さが裏目に出たアトレティコ。“不完全な”レアル、ふてぶてしい盾と矛の交換【西部の4-4-2戦術アナライズ】

アトレティコが躍進して以降、復活の感があるフラットな4-4-2システム。堅守速攻に適した同システムだが、昨今各国リーグで成果を上げている4-4-2は以前のそれとは様相が異なっている。今回は、15-16シーズンのチャンピオンズリーグ決勝におけるアトレティコ・マドリーの戦いぶりを紐解く。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

双方の特徴とは逆の構図になったCL決勝

ディエゴ・シメオネ
アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督【写真:Getty Images】

「カウンターアタックを戦術の基盤にするのは不可能だ」

 セサル・ルイス・メノッティはそう言っている。攻撃サッカーの熱烈な信奉者である元アルゼンチン代表監督によると、カウンターアタックとは「突然芽生える恋心のようなもの」だそうだ。

 アトレティコ・マドリーは守備だけのチームではない。鋭いカウンターアタックを武器にしている。ニアゾーンへの徹底した攻撃、サイドで細かくパスをつなぎきる力量など、攻撃面でも確かな力を持っている。

 ただ、彼らの攻撃は守備を犠牲にしない。相手のカウンターを食らわないように計算されている。強みである堅守をキープしながらの攻撃だ。

 終始弱みをみせない。しかし、これこそがアトレティコの弱みだった。

 CL決勝で対戦したレアル・マドリーは普段よりずっと慎重にプレーしている。カゼミーロをアンカーに置いた4-1-4-1、いつもは攻め残るロナウド、ベイルもしっかりと引いて守備に入っている。前半に先制した後は、攻めるアトレティコと守るレアルという、双方の特徴とは逆の構図になった。

 レアルの守備が盤石だったわけではない。ロナウドの守備は不安定で、ペペとラモスのCBの位置も低い。守ろうとしているわりにはバイタルエリアはスカスカで、アトレティコは何度もそこにパスを入れていた。

 ところが、アトレティコもそんなレアルの守備を崩しきれない。守備のリスクを負って攻めることに慣れておらず、せっかくバイタルで受けているのに上手く仕掛けていけなかった。

 その点で、レアルのほうが弱みを晒しながら戦うことには慣れていた。

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