チームを変えた1人の地味な選手
冬の移籍市場を静観し現有戦力で臨んだこと、チーム掌握のための時間が短かったという事情は考慮に入れても、BBC(カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウド)の個の攻撃力に依存したサッカーはベニテス政権と大きく変わらず、就任から1ヶ月が過ぎた2月半ばには、ジダンの神通力の限界が囁かれてきたのも事実だった。
しかし、1つのシステム変更が大きなターニングポイントになり、その後リーガ閉幕まで12連勝を飾ることになる。それは、第27節のレバンテ戦から、今季ポルトから復帰したMFカゼミーロをアンカーでレギュラー起用したことである。
スター軍団において、プレーも、ルックス的にも地味なブラジル人MFがカギとは皮肉であるが、多くのマドリーファンが元フランス代表MFクロード・マケレレにその姿を重ねる24歳が、チームに欠けていた献身性と安定感をもたらした。
ジダン体制当初はベニテス期と同じく、4-2-3-1と4-3-3の併用であったが、この第27節以降、カゼミーロをアンカーに据え、クロース、モドリッチの3人で中盤を構成するのがベースとなる。
これにより、攻撃でより力を発揮するクロース、モドリッチが一列上でプレーできることになり、チームにダイナミズムを与えた。それは同時に、ハメス・ロドリゲスとイスコというタレントが序列を下げたことも意味していた。
この12連勝からCL制覇までの一連の流れの中で、ジダンが就任会見で「攻撃的かつバランスの取れたサッカー」「私のやり方、ジダン流でやっていく」と標榜したそのスタイルの一端が見えてきた。