今季引退のアッビアーティが内部事情を暴露
その状態に対する単純な憂慮、ということなら指揮官の解任に出る気持ちも分からなくはない。だがこれは完全に誤った判断だった。ベルルスコーニから命を受けて、下部組織から引き上げられたクリスティアン・ブロッキ監督は4-3-1-2のポゼッションサッカーに戻す。
ただ、戦力不足を理由に前任者が諦めたシステムが機能するはずもない。その結果、ピッチで展開されたのは醜悪なもの。ダラダラと遅いパス回しでポゼッション率ばかり高い一方、相手を崩してチャンスを作ることができず、それでいて守備も脆いサッカーだった。
さらに、チームマネージメントも混乱に輪を掛けた。これもベルルスコーニの指令だったのか、ブロッキは前監督のもとで出場機会を減らしていたバロテッリやメネズ、またケビン・プリンス・ボアテンクらの起用を図る。
ただコンディション低下を理由に出場機会を失っていたものたちが、監督更迭という一瞬の出来事で急に復調するわけもない。結局ブロッキは、コッパ・イタリア決勝でまるでミハイロビッチ然としたメンバーとプレスサッカーに切り替える。こういう戦い方とメンバーでしか、チームは回らなかったということだ。
ただこのクラブの問題は、もっと根本的なところにあったのかもしれない。今シーズンで引退を決めたアッビアーティは、赤裸々な内部事情を地元メディアに公言した。
「2011年より前は別のチームだった。練習はみんな一生懸命やっていたし、負けたら悔しくてディスコやナイトクラブなんかに行かなかった。しかも今シーズンは、監督の言うこときかない奴が4、5人いた。1人ならシメられるけど、5人になったら難しい。いずれにせよガットゥーゾがいたら、彼はナイフを持ち出してキレてたところだよ」
結局のところ不振の元凶は、今のロッカールームの状態を見抜けないどころか、非現実的な夢想に走った経営陣にあったということになる。現在は中国人資本家への身売り交渉が進んでいるが、ベルルスコーニは補強などの主導権を握りたがっているという。だが、投資者の好きにさせてもらえない組織に金を払うボランティアなどいるものだろうか。
いずれにせよ、今後は不透明。ユベントスに惜敗したコッパ・イタリア決勝後「これを出発点にしたい」とドンナルンマは語っていたが、どうなるかは皆目見当がつかない。来季への展望? 今の時点ではなんとも言いようがない。