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本田圭佑 8年前

本田圭佑、苦闘と努力の1年。“ゴール”という結果は出せずも…なぜ出場機会を守り続けたのか?

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

なぜ本田は出場機会を守り続けたのか

ブロッキ
ミランのクリスティアン・ブロッキ監督【写真:Getty Images】

 ただ、点を決められなくても結局本田はスタメンを守り続けた。これには理由があり、ちゃんとした必然性があったということだ。

 やはりそれは、攻守両面でプレーの質を保証することができた、という点にある。主にサイドをカバーし、プレスを掛けてボランチが攻め上がった状態でカウンターを喰らえば中盤の穴も埋める。それを繰り返しながら、中盤をつないで味方に前を向かせるようなプレーを心がけた。

 地味ではありながら、チームのために尽くすプレーを90分間やり続ける。これが安定してできる選手は、ミランでは少数派だったのだ。その故に彼は信頼を得て、やがて選手との連携も自然に育った。ボランチのユライ・クツカ、また右SBのイニャツィオ・アバーテから始まって、プレーという上でも本田を理解する。選手間の距離も縮まり、移籍当初の頃と比べれば見違えるほどピッチで溶け込んでいた。

 コンディションそのものは終盤戦も良好であり、チームではトップクラスのスプリント距離を記録していたほか、相手のチャージにもよく耐えていた。ピッチでの献身性や、フィジカルコンディションを保つプロ意識は、ミランの多くのプレーヤーに欠けていたものだ。そんな彼に、ブロッキ監督はコッパ・イタリア決勝で先発するチャンスを与え、延長を含めた120分間任せていた。「各々来季の去就にかかわる試合」と送り出した舞台で、だ。

 サポーターからの凄い批判がチームにも、また本田自身にも浴びせられる中、本人も腹をくくった部分があるのだろう。「ミランのために自分が何とか爪痕を残そうとした時に、自分の特徴を活かすプレーに戻っているだけ」と彼は語っていた。そのことが、プレーを整理することにもつながったのだろう。

 今でこそ海外組の活躍は当たり前になり、結果を出さなければ不甲斐ないとみなされるようになった。それは正しいし、プロとして勝利に貢献できなければ厳しく批判されても仕方がない。

 しかし、自軍サポーターすら敵になるようなプレッシャーの中で、通用するために苦闘すること自体も相当な努力と節制が払われている。厳しい挑戦に身を置くことについては、一定のリスペクトが与えられるべきである。

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