ロナウドもベイルも守備に奔走
アトレティコには戦術の幅も狙いもあり、攻守において選手が連動し、チームの核ともいえる4と4の2ラインは決して崩されることはなかった。逆にマドリーは、この2ラインを崩せなかったことでクリスティアーノ・ロナウドが120分間で全く存在感を発揮することができなかった。
得点が動かず終了した延長前後半を含めた120分間、レアル・マドリーもアトレティコ・マドリーも多くの選手が足を痛めながら全力でのプレーを続けたが、チームとしての成熟度ではやはりアトレティコが上だったといえるだろう。それでもPK戦の末、栄冠を手にしたのはレアル・マドリーだった。
では、この結果は“アンフェア”だったのか?
しかし、レアル・マドリーは通常、攻撃へのアクションを起こすことを好むチームだが、上記のようにロナウドやベイルも低い位置まで下がり、全力でピッチを駆け回った。
これはCL決勝という試合の重要性を示す場面であり、マドリーの面々のようなスターたちが必死にボールを追ったからこそ、この試合は白熱したものとなった。
シメオネ監督が5年という歳月をかけて作りあげたチームであっても、世界中から集った異次元の選手たちが高い集中力を持って守備をすれば簡単には崩せない。マドリーは自らの理想を捨てて、勝負に徹したからこそ11度目の優勝を手に入れた。それはバルサもバイエルンもできなかったことだった。
マドリードという街を共有しながら、対照的なチーム哲学で勝ち上がってきたこの2チームの対戦は、チーム作り、戦術、采配、ピッチ上での選手の気迫など様々な観点から目が離せない好ゲームとなった。
この試合の結果、年末のクラブワールドカップにはジネディーヌ・ジダン監督が率いる(現状のままなら)、レアル・マドリーが出場。現時点で日本での最後の大会となるが、来日の際には大きな話題を提供してくれるだろう。
(文:海老沢純一)
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