日本代表を視界に捉えていたからこその昂ぶり
小林の1試合のシュート数は2~3本といったところだが、J1開幕当初に比べてバイタルエリアへ効果的に顔を出す機会は増えている。鹿島戦のゴールは相手のクリアミスに抜け目なく反応し、得意の左足を振り抜いたもの。
ガンバ大阪戦では直接FKを決めたが、注目すべきはファウルを誘った味方とのコンビネーションだ。右サイドでボールを持った小林は、前進しながら味方に預ける。そして、リターンから宮崎智彦とのワンツーを受けようとしたところで倒され、ゴールを生むことになるFKを得た。
さらに甲府戦では、ゴール前へ駆け上がるとクロスボールを冷静に流し込んだ。この試合後、日本代表監督が視察に訪れていたことについて問われると、サックスブルーの背番号4はこう答えた。
「意識しないようにと思いつつも、移動のバスの中ではハリルホジッチ監督の顔しか浮かばなかった。それくらい意識しちゃう部分はあった。でも試合に入ったら忘れていたし、チームメイトを信頼して攻めた結果、(チームとして)3点取れた」
日本代表をその視界に捉えていたからこそ、昂ぶるものがあった。その中でゴールを奪い、いつもと変わらず磐田の攻撃を司った。ハリルホジッチ監督は「長い時間をかけて追跡してきた」と代表発表会見で話しており、甲府戦だけで小林の選出を決めたわけではないだろうが、強烈なインパクトを与えたことは確かだ。
小林にとって今回のメンバー入りは“必然”だった。「代表を目標にしていたけど、2ヶ月前くらいに目標をさらに高く設定した」という。具体的なビジョンまでは明かさなかったが、「5月の試合に出られるのはでかい」と話していた男には確信があったのだ。磐田で活躍し、自分の持っているものを発揮すれば必ずハリルホジッチ監督の目に留まると。
小林祐希が日の丸を背負うことに、何ら不思議はない。そのことを最も感じているのは他ならぬ彼自身だろう。
(取材・文:青木務)
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