役割も権限も異なる「代表監督」と「クラブ監督」
一方でマネージャーは、ピッチ上での指導やコーチ業務だけでなく、クラブ経営まで含めて管理・運営する。コーチがチームの管理、監督をする人だとしたら、マネージャーは現場の責任者として、クラブ全体の管理・運営にも目を配る権限を持つ、といえばいいか。
同書では、ベンゲルが観客動員のための営業会議にまで出席し、クラブの地域活動から年間予算作成にいたるまでの業務に何らかの参画(口出し、とも言う)をしている話が紹介されている。
サッカークラブが巨大ビジネスになったことで、いまや「監督」は現場の指揮をとるだけではすまなくなったことを如実に表しているのが「マネージャー」という肩書なのだ。
裏返すと、サッカーの戦術に通じているだけではクラブチームの指揮官はつとまらない、ということをマネージャーという肩書は表している。現場だけでなく、クラブ経営のマネージメント=経営管理の能力の有無が、指揮官の資質として問われている時代になっている、ということだ。
さて、日本ではクラブチームでもナショナルチームでも指揮官は「監督」という肩書で呼ばれている。責任をとるべき業務の内容は、クラブチームとナショナルチームではもちろん違うはずだし、クラブごとに「監督」に課せられた業務と与えられた権限は違っているはずである。
それでも日本語では「監督」であり、コーチ、トレーナーやマネージャーの肩書は別の業務担当者に当てられている。
たかが肩書、されど肩書。フランスやスペインほど厳密にする必要はないにしても、ナショナルチームとクラブチームの指揮官の肩書を分けることで、課せられた仕事の内容が、ファンだけでなくチーム内でも明確に理解されるのではないだろうか。
そもそも「監督」という言葉は、現在のサッカーチームの「監督」の仕事にあっているのだろうか。
(文:実川元子)
※文中の外国語表記は、文字化けの影響を避けるため、アクセント記号が反映されておりません。ご了承ください。
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