近年増えてきた「マネージャー」
クラブチームの指揮官は、フランスでもスペインのクラブと同じくトレーナーという肩書である。たとえば、リーグ・アンを圧倒的強さで優勝したパリ・サンジェルマンを率いるローラン・ブランは、アントレヌールという肩書だ。
2010年から12年まで、彼はレ・ブルー(フランス代表)の「セレクシオヌール」だった。ブランは2012年、前回の欧州選手権で準々決勝敗退の責任をとって辞任した後、レアル・マドリー監督になったカルロ・アンチェロッティの後任として、2013?14シーズンからPSGにやってきた。
就任後の3シーズン連続リーグ優勝の実績からすれば、ブランはセレクシオヌールよりもアントレヌールの仕事に向いている、という見方もできそうだ。
クラブチームの監督の肩書には「マネージャー(Manager)」という呼称もある。イングランド・プレミアリーグ所属クラブを率いる指揮官は、最近ではほぼマネージャーと呼称されている。私が知る範囲ではあるが、2000年以前のサッカーについて書かれた書籍では、プレミアリーグで監督に相当する人はコーチと呼称されていた。
サッカーが、特にイングランドで巨大ビジネスになってきた2000年以降、呼び方は管理者、経営者の意味を持つマネージャーとなっていったように思う。
2004年に英国で第一版が出版された”The 90-Minute Manager: Lessons from the Sharp End of Management”というベスト&ロングセラー本がある。ビジネス書を数多く手がける二人の著者たちが、ベンゲル、モウリーニョ、クラフ、キーガンといったクラブチームの監督を取り上げ、彼らが立てる戦略、チームの管理、短期的・長期的ビジョンなどを、ビジネスの見地から分析した本だ。
ちなみに本書はサッカー関連書籍としてではなくビジネス書としてベストセラーとなり、その後内容を変えて第三版まで出版された。
本書を読んだとき、初めてコーチとマネージャーの違いがよくわかった。コーチは試合でよい成績をあげることを目的とし、日々練習場で選手たちに技術的・戦術的な指導をする役目を持つ人である。つまりフランス語のアントレヌールだ。