深刻なCB不足、そして生み出した“0バック”
ウイングを欠くと、戦術的な制限がバイエルンを縛る。ブンデスリーガはともかく、CLの戦いを考えればウインガーの存在は不可欠だった。主翼の安定に目処が立たない状況では、なおのことだ。
“代翼”の活躍もあって、前期のバイエルンはブンデスリーガを15勝1分1敗、46得点8失点の数字を残した。CBボアテングからロングボールを繰り出し、好機と見るやカウンターも厭わない。
そのスケールの大きさとダイナミズムで、第8節では2位のドルトムントを5-1と突き放している。レヴァンドフスキとミュラーの二枚看板が15+14=29得点とブレイクし、首位で折り返す。
DFBポカールは準々決勝に駒を進め、CLはグループFを首位で通過した。12月20日には、ペップがバイエルンと契約を延長しないことが発表される。ペップ・バイエルンは2季連続で潰えた3冠の夢に向かって、物語の最後を描き始めた。
一方で、12月に入ると「怪我人」が増えだした。前期最終節のインゴルシュタット戦では、ゲッツェ、アラバ、ベルナト、コスタ、ロッベン、リベリー、ベナティアの7名を欠いて臨んでいる。16日のポカールのベスト16、ダルムシュタット戦の後で、ペップは「最近の我々は13、14人のメンバーで試合をこなしている」と漏らした。
特にCBの不足が深刻となった。1月の後期開幕戦ではボアテングが、その1週間後には練習中にマルティネスが離脱した。そこでバイエルンは、冬の移籍市場が閉じる寸前に、タスキをレンタルで緊急獲得する。
しかし、さらに2月に入るとバドシュトゥバーが足首の関節を骨折し、合流直後のタスキと復帰間近のベナティアのコンディションは整わない。CB不在とも言える状況で、ペップは奇策に出た。“0バック”である。
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