厳しいシーズンで見えた光明。若き才能の躍動
シーズン序盤に左サイドを躍動していたルーク・ショーが長期離脱を強いられ、キャプテンのウェイン・ルーニーなど負傷者が続出したことには同情の余地はある。しかし、チームのスタイルや軸の最適解を見つけ出すことができなかったことは事実だ。
プレミアリーグが20チーム、年間38試合制になった1995/1996シーズン以降で、得点数49、得失点差14はクラブにとって過去最低の数字。ファン・ハール監督が点を取るための術を選手たちに与えることができなかったことを顕著に示す数字である。
厳しいシーズンになったが、それでも5位でフィニッシュすることができたのはGKダビド・デ・ヘアの存在とクリス・スモーリングの成長による守備陣の踏ん張り。そしてアントニー・マルシアルやマーカス・ラッシュフォード、ジェシー・リンガードなどの若手アタッカーの活躍である。
デ・ヘアは今シーズンも素晴らしい活躍を見せた。全く無駄な動きがなく、しなやかな体の使い方でシュートストップをする姿は美しさすら覚える。スモーリングは無駄なファウルと故障が減り、一年間ディフェンスリーダーとしてチームを鼓舞した。
獲得が発表され、100億円を超えるとも言われている移籍金が明らかになった時には、それに値するポテンシャルが本当にあるのか疑問視されたマルシアルであるが、チームに欠かせない存在であった。
加入後初出場となったリバプールとのナショナル・ダービーでいきなりゴールを決めると、チーム最多となるリーグ11得点。その移籍金に見合う結果とプレーぶりを見せつけた。
マルシアルがELベスト32ミッティラン戦のセカンドレグのウォーミングアップ中に負傷し、代わりに出場したのがラッシュフォード。その試合で試合を決める2ゴールを決めると、アーセナル戦、マンチェスター・ダービーとビッグゲームでも結果を出した。リンガードはFAカップ決勝点で決めたボレーシュートのように高いシュート技術を持っている。
マルシアルやラッシュフォードのような若い才能を引き出すことができたのは、ファン・ハール監督の数少ない功績とも言える。