ファンを失望させた2年間
「We’re Manchester United、we want to Attack」
この言葉が夢の劇場、オールド・トラッフォードで響き渡ったときにはルイス・ファン・ハール政権の終焉は決まっていたのだろう。迫力のある攻撃で相手を打ち破るのがユナイテッドだというファンの気持ちとは裏腹に、ピッチ上で繰り広げられているのは退屈なサッカー。“失望”という言葉が当てはまるマンチェスター・ユナイテッドの2015/2016シーズンであった。
就任2年目のファン・ハール監督。今シーズンはチャンピオンズリーグ(CL)上位進出、プレミアリーグのタイトルを期待されたシーズンであったが、CLではグループリーグ敗退、ヨーロッパリーグ(EL)でもベスト16で敗退。プレミアリーグでは5位に終わり、CLの出場権を獲得することすらできなかった。
26年チームを率いたサー・アレックス・ファーガソンが退任したあとデイビッド・モイーズがチームを掌握することができず、ファン・ハール監督に求めたられたのは結果と未来に繋がるチームのスタイルの構築であった。
しかし、2年間の時間と多額の補強費を与えられたものの、スタンドのファンから出たのは歓声や拍手ではなくため息、そして冒頭の言葉だ。
昨シーズン終盤に確立したマルアン・フェライニを軸にしたロングボールを中心としたサッカーを捨て、新たな攻撃の形を構築していこうと試みたが、パスは各駅停車でしか回らず、流動性もなく、個の力に大きく依存するサッカーがシーズンを通して繰り広げられた。
ウイングに1対1の勝負を仕掛けさせ、クロスを上げるというのが唯一意図を持った作戦であったが、ユナイテッドのウイングたちは自力ではなく周りを使いながら突破していくタイプであり、またクロスが上がってもエリア内には1人しかいないというシーンがほとんどであった。