8人ブロックを10人に増員したアトレティコ
バルセロナとレアル・マドリーの二強リーグだったリーガ・エスパニョーラは、アトレティコ・マドリーの台頭で三強に変化した。スペインの両雄に肩を並べたアトレティコは、自動的にCLでも優勝候補の一角である。
バルサ、レアルに対抗するための堅守速攻に徹したプレースタイル。基本システムは4-4-2、この型のチームとしてはおそらく世界最強だろう。
アトレティコは2トップを守備組織に組み込んで、従来の8人ブロックから10人に増員して守備を強化した。「間受け」と「ニアゾーン」という4-4-2の構造的な弱点を克服しているのも大きい。
ゾーンディフェンス攻略のポイントは、MFとDFの間へパスをつなぐ「間受け」だ。MF4人とDF4人、この8人を線で結ぶと3つの四角形ができる(図1)。それらの中心にパスをつながれると、周囲の守備者4人はそこへ向かって収縮する。
収縮することでボール保持者への圧力は強まるが、それだけ周囲にはスペースが空く。収縮してボールを奪いとる前に、広がったスペースへボールを逃がされてしまうと、守備のバランスが崩れやすくなる。もちろん絵に描いたように四角形が3つできているわけではないし、「間」へパスを入れられたときに周囲の4人全員がボールへ向かうわけでもない。
だが、「間受け」をされると守備側がポジション修正を迫られる。そのぶん攻撃側に使えるスペースが生まれ、守備側には不利な状況になっていく。ごく単純化すると、守備側のFWとMFの「間」へつなぎ、さらにMFとDFの「間」へつなげば、次のパスでディフェンスラインの裏へ入ることも可能なのだ。
アトレティコは、この構造的な弱点をかなりの程度潰すことに成功している。