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Jリーグ 9年前

統計学で見るJリーグ・2ステージ制の矛盾。確率が導き出した歪なバランスと制度設計の問題点

text by 山下祐司 photo by Asuka Kudo / Football Channel , Getty Images

サッカーの統計処理は確率論の例題としてポピュラー

自チームの平均得点と相手チームの平均失点ごとの自チーム得点の分布
図:自チームの平均得点と相手チームの平均失点ごとの自チーム得点の分布

 この確率は、2010年から2014年までのJ1リーグの実際の試合結果から各チームの平均得点と平均失点をもとにモデルとなる式をつくり、10万シーズンぶんの仮想試合を行って出した数値だ。ちなみに、18チームが参加する現在のJ1のリーグ戦では1シーズンに306試合が行われる。

 サッカーの得点を使った統計処理は確率論の例題としてポピュラーなのだという。「サッカーの得点はポアソン分布で近似できます」と小中准教授は話す。ポアソン分布をもとに、あるチームの平均得点からそのチームが1試合に1得点する確率、2得点する確率、3得点する確率……と計算できる。例えば1試合に平均1.4得点するチームなら1試合で0点の確率24.7%、1得点の確率34.5%、2得点24.2%、3得点11.3%と導けるのだ。

 小中准教授は得点だけではなく、失点も加えて分析できるようにした。2010年から2014年まで、すべての試合の得失点を調べ上げ、各チームの1試合の平均得失点を計算。平均得点を攻撃力に、平均失点を守備力に見立てた。

 チームの攻撃力、守備力と対戦相手の攻撃力、守備力の力関係から得点と失点を予測し(図:自チームの平均得点と相手チームの平均失点ごとの自チーム得点の分布)、その「試合結果」から勝点を計算できるようにした。

 サンフレッチェ広島がJ1上位チームと対戦するときと下位チームと対戦したときとの得点と失点に差がでるように、対戦するチームの「実力」を仮想的にぶつけ合えるようにしたのだ。「攻撃力だけでなく守備力を組み込み、それぞれのチームを対戦させるところがキモ」と小中准教授は語る(編注:仮想試合について小中准教授は綿密な数理モデルを設計しているが、ここでは割愛する)。

 Jリーグがはじまった1993年から2014年、過去22年間のJ1の試合結果を現行の制度にあてはめ、その割合を調べると、CSに進めるチームが年間勝点の上位3チームのみになるケースは16回で【73%】。

 年間勝点の上位3チームと1stと2ndステージ優勝のどちらか一方が重なり、4チームによって争われるケースは5回で【23%】。年間勝点の上位3チームと1stと2ndステージ優勝のチームが重ならず5チームで争うケースはたったの1回で確率は【4%】だった。

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