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「私にとってポゼッションはライバルを快適にするもの」。闘将シメオネのフットボール観【前編】

シリーズ:闘将シメオネのフットボール観 text by 江間慎一郎 photo by Getty Images

「私にとってポゼッションは、ライバルを快適にするもの」

G 君がチームに植え付けたメンタリティーには全面的に同意するよ。

S いいや。選手たちにはアイデアを教えたに過ぎない。逆に我々は、彼らのような威厳ある選手たちに出会える運を持ったんだよ。ペップ・グアルディオラとUEFAの監督カンファレンスで話し合ったことを思い出すね。

 心に残っている彼の言葉は「ボールを扱うことを好む選手たちに恵まれた私の幸運を、君は分かっていないよ」というものだった。バルセロナで絶頂とも言える時期を過ごしていた彼が、そんな言葉を口にするなんて途方もないことだ。

 つまりフットボールにおける本質というものは、選手たちとの出会いにこそあるんだよ。ボールを扱うことを好む選手たち、競争に臨むことを好む選手たち、とね。

 招集外となって、それを不快に感じるのもいい。だが次の日には、「俺を起用するために頭を悩ませることになるぞ」と言うために、もっと練習に取り組むべきなんだ。アトレティコ・マドリーはここ数年で、我々のそのような考え方に少しずつ近づいている。

M ジエゴ・コスタの代わりをマンジュキッチが務めたことで、プレースタイルが変わったと思うけど。前線でもっとボールを保持するように……。

S 前線ではなくサイドだね。今季(2014-15シーズン)の我々は、確かにポゼッション率を高めるようになった。ほかの人間にとっては歓迎すべきこととしても、自分はそこまで好んでいないがね。私にとってポゼッションは、ライバルを快適にするものなんだ。

 それでも、もし好ましいポゼッションがあるとすれば、相手に打撃を与えるためにプレーリズムを変化させられるものだろう。そうできるのであれば、もちろん歓迎するよ。

 一方で眠気を誘うようなポゼッションだとしたら、退屈から逃れるためにチャンネルを変えられてしまう。それはアクション映画と長編の恋愛ドラマのどちらが好きかという話で、自分はアクション映画の方を好んでいる。

【中編】に続く

(翻訳・編集:江間慎一郎)

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