“持ってる”男、パイエの滑り込み
対照的に、チャンスをつかんだのがパイエだ。今年3月のテストマッチに9ヶ月ぶりに代表に呼ばれると、62分にピッチに登場し、2分後に鮮やかな直接FKからゴールを決めた。今季ウェスト・ハムでも何度も披露したこの妙技。
「なんて“持ってる”ヤツなんだ……」と誰もが思ったことだろう。そしてEUROのようなトーナメントでは、往々にして、その時期“持ってる”プレーヤーが決定的な働きをしたりするものだ。
彼がEUROへの切符を手にいれた瞬間だった。パイエは過去にも何度も招集されているが、代表となると、クラブチームでのような活躍ができないのが常だった。この3月のテストマッチで見所がなければ、デシャンは彼の招集を見送っていたかもしれない。悪しきジンクスを払拭する会心のFKだった。ウェスト・ハムでの挑戦が、彼を一回り成長させたにちがいない。
もう一人、タイミングを味方につけたのがエンゴロ・カンテだ。もともと好プレーヤーではあったが、昨シーズンのままカーンにいたら、このEURO行きはなかった。今季上昇気流にあったレスターで彼のパフォーマンスにもどんどん磨きがかかり、堂々の優勝メンバーとなった。
3月の親善試合で初招集。1戦目のオランダ戦で後半から出場すると、初の先発フル出場となった2戦目のロシア戦では、開始6分に先制点をあげて、自らのバースデーを祝った。
ちなみに、デシャン監督の正発表の前日、ル・モンド紙が読者投票による23人のメンバーを発表した。
ほとんどデシャン監督のチョイスと変わらなかったが、違っていたのが3人。GKコスティルの代わりにアレオラ、キャバイエの代わりにラビオ、そしてジルーの代わりにベン・アルファだ。
キャバイエ、ジルーはともにプレミアリーガーで、活躍ぶりは伝わりにくい。それよりも、リーグ1でコンスタントにプレーしていたラビオやベン・アルファをフランスのファンは推したのだろう。