“おとぎ話”のような優勝。大穴中の大穴が戴冠して世界中が歓喜
今季のレスターの偉業を一言で例えるなら「おとぎ話」である。それは誰も考えられなかったシナリオであり、夢の中でしかありえないような驚きのストーリーだった。
昨今のプレミアリーグはチェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、アーセナルのビッグ4のどれかが優勝することが当たり前となり、もしこれら以外のほかのチームに優勝の可能性があるとすれば、それは常に5位、6位に食い込むリバプールかトッテナムだと考えられていた。
しかしながら、今季は開幕前に降格の大本命とされていたレスターが序盤から好調を維持して13節後にはついに首位に立つ。その後も上位を維持して、23節にアーセナルと順位を逆転すると、そのまま邁進。優勝ラインを通り越してみせた。
最終的にシーズンを通じて3敗。大穴中の大穴が戴冠を達成して、英国のみならず世界中のフットボールファンを喜ばせた。
そんなチームの前半戦は、勢いを頼りにしたサッカーだった。ピッチの上には、昨季の終盤戦に連勝を重ねて、奇跡的に降格を免れたチームがそのままあった。ナイジェル・ピアソン前監督が残した遺産を踏襲したクラウディオ・ラニエリ監督は、敢えてチームに大きな変化をもたらさずに、手を加えないようにした。
その結果が、毎試合複数点を取る攻撃的なスタイルであり、その一方で失点も少なくないもろ刃の剣のチームだったといえる。
前半戦の岡崎慎司は、チームの好調について「よく分からないですね」とコメントすることが多かった。見ている者たちも、実際にその通りと感じていた。何とも掴みどころのないチームで、戦術的にもまるで目立つところはない。すべてが選手任せ、勢い任せのように映ったからだ。
ただ実際には、目立たぬところでイタリア人の老将は微調整をこらしていたようだった。それが結果的に後半戦の堅守速攻のチームへの変化へとつながった。それは、連勝を重ねて敵に研究されるチームにとっては絶対に必要なものだった。点を奪うのが厳しくなる一方、人数をかけて守備をすることで大きく失点を減少させるのに成功したのである。