敗戦も垣間見えたミランの将来像
守備では66分、ポール・ポグバとマッチアップし、何度もフェイントを仕掛けられながらも喰らい付き、最後はクロスのミスも誘った。彼はこのようなタフネスを後半も、また延長でも発揮しチームに貢献し続けた。
タッチの柔らかいドリブルでも度々チャンスを作り、連係を探すだけではなく単独でもチャレンジを仕掛けていた。失点された直後の延長後半には、エリア内でのドリブルからキエッリーニのチャージを誘っている。
接触して足を掛けられて倒されたようにも見えたが、本田が少し耐えたため直接のチャージはないと見たのか、主審はファウルを取らずに流した。
もちろん全てが手放しで褒められる内容だったわけではない。チームはノーゴール、つまりゴール前での仕事に関しては本田にも落ち度があるということ。ダイレクトシュートを外した前半43分のプレーなど、フィニッシュに結びつく場面での物足りなさはこの日も顔を覗かせていた。
だが勝利への意欲を前面に出し、チャレンジを繰り返したプレー自体は素晴らしかった。コンディション調整の問題があってユーベが本調子ではなかったとしても、あの彼らをハードワークで追い詰めるのは決して簡単なことではなかった。少なくとも、一週間前のローマ戦で締まらないサッカーをしたミランの姿からは想像もつかなかったこと。
チームとしてこれだけのパフォーマンスを演じながら負けたということは、かえって悔しさも大きくなるかもしれない。「いつもこれだけのパフォーマンスができていたら」とポーリは地元メディア相手に語っていたが、今後への自信にはなる。
「僕たちのチームは、どこが相手であろうと競争力があることを証明した」とGKジャンルイジ・ドンナルンマは語った。
果たしてこの日の延長上に、ミランの将来像は存在するのか。スタンドで試合を観戦していたシルビオ・ベルルスコーニ名誉会長は「結果は残念だけど、パフォーマンスは良かった。選手たちにはよく頑張ってくれたと言った」などと語っていた。
(取材・文:神尾光臣【ローマ】)
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