勝負に行けなかったBVB。巨大な存在のままペップは去る
しかし、布陣は5-4-1のままだった。後半戦に入ってトゥヘルが手塩にかけた3バック+2シャドーには変更しなかった。108分にリベリーに替えてコマンが投入されたので、依然として裏を取られることを警戒しなければならなかったところはある。
今季最後の試合の延長後半では、疲労の蓄積も極限に達していただろう。しかし疲労という点では、バイエルンも同様のはずだ。香川を投入した最後の15分間、前に比重を置いて、勝負に出ても良かったのではないだろうか。
もちろん、これは結果論に過ぎない。PK戦はギャンブルだ。ドルトムントが勝利していた可能性もある。それでも、最後の最後でリスクを負わないのであれば、なぜ後半戦に入って新戦術に取り組んできたのだろうか。
つまり多大な影響を受けてきたトゥヘルにとって、同じ土俵で戦ってきてなお、ペップは巨大な存在のままだった。バイエルンが掲げた黄金色の杯のように、手が届きそうな距離にありながら、触れることはできなかった。
そしてペップはドイツを離れて、イングランドに旅立つ。
トゥヘルがペップに屈した、DFBポカール決勝だった。
(取材・文:本田千尋【ベルリン】)
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