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F・トーレスが誓うアトレティコへの忠誠。“エル・ニーニョ”とロヒブランコ、純愛の物語【後編】

text by アルベルト・ロメロ・バルベーロ photo by Getty Images

マドリーに対しては、一度も首を縦に振らなかった

 人生とフットボールはパラドックスに満ちたものであるが、トーレスの選手としてのキャリアは、それを見事に体現していると言えよう。2007年夏、自分よりも年上の選手たちを差し置いて、キャプテンマークを巻いていた彼は、クラブの成長を助けるためにユール・ネヴァー・ウォーク・アローン(人生ひとりではない)を歌うリヴァプールへと移籍。

 彼がアトレティコに残していった移籍金3700万ユーロは、フォルラン、シモン・サブローサ、ラウール・ガルシア、ホセ・アントニオ・レジェスの獲得費用として使われ、その後にクラブがつかんだ成功のベースとなっている。しかしトーレスは、リヴァプール同様に自身への興味を示したマドリーに対して、一度も首を縦に振らなかった。

 それは当時のマドリーのスポーツディレクター、プレドラグ・ミヤトビッチも「実現が厳しい取引だった。金ではなく、彼が在籍していたクラブの方が問題だった」と認めるところであり、アトレティコのファンは憎きライバルの敵対行動を今なお根に持ち続けている。

「自分の家はアトレティコだけ。そこから去ったならば、タイトル獲得を目指していかなくてはならない。そう考えて挑戦していくべきなんだ」

 断固たる意思を胸に秘めたトーレスが、驚くべき数のタイトルを獲得してきたことは周知の通りである。彼はワールドカップ、EURO(2008、2012)、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグを制した、フットボール史上唯一の選手であり、アトレティコのファンもエル・ニーニョがタイトルを獲得する度に喜びの声を上げた。

 リヴァプール、チェルシー、ミラン、スペイン代表……。どのチームで優勝を成し遂げたかに関係なく、ロヒブランコの視線は歓喜する彼の姿だけに注がれていたのだった。

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