攻め残り頻度はそれほど高くないマハレズ
カウンターアタックでは、いかに「攻め残るか」。ボールと反対サイドのサイドハーフが、味方ボランチと同じところまで下がってスペースを埋めるのか、そこまで下がらずにカウンターアタックで有利なポジションに残るか、その判断がカギになる。
どちらが良いかはそのときの状況、敵味方の力関係など、さまざまな要素が介在するので一概にはいえない。レスターでは、左のマーク・オルブライトンはほとんど攻め残らない。攻撃面でのオルブライトンはクロスボール職人で、ほぼ少し前に位置するサイドバックだ。
右のマハレズはレスターで最も個人能力の高いテクニシャン、彼がカウンターアタックの軸になっていた。マハレズの攻め残りはある程度容認される。しかし、ボールポゼッションの低いレスターは攻め込まれる状況が多く、マハレズの攻め残り頻度は実はそれほど高くない。
オルブライトンと同様に深く下がらざるをえず、長い距離の上下動をどれだけ繰り返せるかが課題だった。マハレズは課題をクリアし、得点とアシストの両面で大車輪の活躍をみせた。
ダニー・ドリンクウォーターとボランチを組むカンテのボール奪取能力も忘れてはならない。カンテは新しい“マケレレ”で、とくに相手の背後からファウルせずにボールをスチールする能力は格別だった。これがあるので、相手の「間受け」を阻止できたといっていい。配球力にも優れ、カウンターアタックの起点にもなっていた。
レスターは個々の能力も低くはない。ただし、全体的には標準の域を出ず、優勝の要因はあくまでも全員のハードワークである。その点で4-4-2というシステムとの相性も良く、その利点を使い切ったともいえるかもしれない。
4-4-2にもいろいろあるが、どちらかといえばレスターのように堅守速攻に向いている。そして、ハードワークを前提としたシステムでもある。
(文:西部謙司)
【了】