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レスターが使いきった“新型4-4-2”の利点。10人ブロックの構築。戦術上不可欠な岡崎【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

FWに求められるニアゾーンへの引き出し

守備のタスクをこなしながら得点を量産したヴァーディー
守備のタスクをこなしながら得点を量産したヴァーディー【写真:Getty Images】

 シーズン24ゴールは堂々のエースストライカーで、少し前ならば守備は免除されて攻撃と得点のためのエネルギー温存を許されていただろう。

 しかし、現在のサッカーで特権階級を認められるのはレアル・マドリーのクリスティアーノ・ロナウドとバルセロナのリオネル・メッシぐらいなのだ。彼らはシーズン40ゴールを記録するモンスターFWなので、守備をしてもらわなくても十分お釣りがくる。

 年間30ゴールは微妙なところ、それ以下ならば守備のタスクを負ったうえで点もとれという、かなり過酷な要求をつきつけられている。ヴァーディーはその要求にパーフェクトに応えた。

 ただ、新型4-4-2のFWへの要求はこれだけではない。とくにレスターの場合はもう1つのポイントとなる要求があった。

 FWが斜めのランニングでロングボールを引き出さなければならない。相手のサイドバックとセンターバックの間のスペース、いわゆる「ニアゾーン」への侵入はゾーンの4バックを攻略するうえで定石といっていい攻め手である。

 レスターでなくても手の内に入れておくべき攻撃ルートなのだが、レスターにおいてとくにこれが重要なのはビルドアップの能力が低いからだ。DFからパスをつないで攻め上がることがあまりできない。

 そのためにDFからのロングボールが多くなる。ただ、漫然と大きく蹴り出すだけでは、ほとんどが相手のボールになってしまうし、そうなると全体が間延びしてしまう。ライン間が広がってしまえば10人ブロックは崩壊の一歩手前だ。

 そこで無計画なロングボールではなく、ボールを蹴り出す場所に狙いを持つ。相手は攻撃で前に出てきていて、ボールサイドのサイドバックはかなり高い位置まで来ていることが多い。

 つまり、相手の最後尾にいるのは2人のセンターバックだけになる。センターバックの横のスペースが、このケースでの「ニアゾーン」だ。中央から斜めに走って、このニアゾーンでボールを受ける役割がFWに託されることになる。

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