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F・トーレスが誓うアトレティコへの忠誠。“エル・ニーニョ”とロヒブランコ、純愛の物語【前編】

2015年、心のクラブであるアトレティコ・マドリーに復帰したフェルナンド・トーレス。他のどんなビッグクラブでプレーしようともアトレティコへの忠誠を誓い続けてきた。美しき物語の主人公はいかにして生まれ、堅い絆の源には何があるのか? トーレスのアトレティコ復帰時に、スペイン紙「マルカ」アトレティコ・マドリーセクションのチーフが綴った壮大なコラムを掲載する。(文:アルベルト・ロメロ・バルベーロ/翻訳:江間慎一郎/『欧州フットボール批評 special issue 01』より転載)

text by アルベルト・ロメロ・バルベーロ photo by Getty Images

F・トーレスに注がれる比類なき愛情

アトレティコでプレーする若き日のトーレス
アトレティコでプレーする若き日のトーレス【写真:Getty Images】

「自分のチームが勝利したとき以上の喜びだよ」

 ミゲル・アンヘル・ヒル・マリンが携帯電話で受け取った数百のメッセージの中でも、フェルナンド・トーレスの記したそれこそが最も誇らしげだった。メッセージが送られたのは2012年5月10日。アトレティコがブカレストでアスレティック・ビルバオを下し、ヨーロッパリーグ制覇を果たした直後のことだ。

 アトレティコCEOと選手はかねてより親しい関係にあったが、祝福の文面は少し奇妙にも映った。トーレスが当時所属していたクラブはチェルシーであり、9日後にチャンピオンズリーグ決勝のバイエルン・ミュンヘン戦が控えていたのだから。バイエルンを下せば、UEFAスーパーカップで古巣と対戦するにもかかわらず、彼はそう書き綴ったのだった。

 エル・ニーニョ(F・トーレスの愛称、子供の意。日本では神の子とも訳されるが、スペインでは若くしてデビューした選手によく付けられる愛称であり、子供という意味合いが強い)は、チェルシーよりもアトレティコの勝利を喜んだ。

 もちろん、それはプライベートのことであり、公の場でそう言明していたならば、自クラブのファンから反感を買っただろう。もし、青のユニフォームの信奉者がこの文章を読んでいるとしたら、一記者の戯言と受け止めてもらってかまわない。

 しかしフットボールや愛において、感じられないことを理解する術はないのである。トーレスは過去にアトレティコへの愛を誓い、現在もアトレティコに忠誠を尽くし、未来にもアトレティコを愛するのだ。

 無論、そのように称せる人間は、トーレス以外にも多く存在する。が、数週間前に実現した、エル・ニーニョの7年半ぶりとなるアトレティコ帰還で、彼が唯一無二の存在であることが証明されてしまった。トーレスはアトレティコに愛を誓った人間だが、アトレティコもまたトーレスに愛を誓ったクラブなのである。

 その愛情の重さをはかれるものは、私の知る限り、どんな店でも売ってはいない。だが2015年1月4日、アトレティコの本拠地ビセンテ・カルデロンで起こったことが、まごうことなきはかりとなるだろう。

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