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Jリーグ 9年前

ロアッソが願う熊本の復興。故郷への思い、敗戦の悔しさ、古巣・千葉からの愛情…巻誠一郎が浮かべた涙

text by 今関飛駒 photo by Dan Orlowitz , Getty Images

キャプテン岡本と清武が語った試合への喜び

岡本
プレーできる喜びを語ったキャプテンの岡本賢明【写真:ダン・オロウィッツ】

 震災が起きて以降、チームは十分な練習を行うこともできず、中には避難所で生活する選手もいた。

 この1ヶ月間、どうしてもサッカー以外のことを考えざるを得なかった――。キャプテンの岡本は、その空白の期間について振り返った。

「震災直後はなかなかサッカーをできるようなメンタルじゃなかったし、熊本にいる人たちがサッカーをできる状況ではないことはみんな分かっていたと思うんですけど、『自分たちはサッカー選手で、サッカーを通じていろいろやっていなければいけない』という中でしっかり切り替えてサッカーに打ち込んできました。本当に難しい1ヶ月間でしたけど、今日スタートすることができた。次は結果につなげていけるよう頑張っていきたいです」

 ロアッソは本拠地のうまかな・よかなスタジアムの安全が確保できず使用再開の目途が立っていない。それでも岡本は、サッカーができる環境に喜びを感じているようだ。

「ホームを使えない難しさよりも、サッカーが、試合ができることへの感謝の方が大きいので、その気持ちがあれば場所がどこでも自分たちの力が発揮できると思うし、しなくちゃいけない」

 また、清武功暉も同様に試合への喜びを口にした。日本代表の清武弘嗣を兄に持つ背番号10番は、後半に足を攣ってしまう場面もあったが、90分間を戦い抜いた。

「今日はキヨさん(清川監督)が『最後まで諦めない姿勢を貫いて、どんなスコアでも諦めない姿勢で戦おう』って言っていたし、選手全員もその思いを持っていたので最後まで走り切ることができました。この1ヶ月間でチームが本格始動してからはサッカーが楽しいし、今日は千葉のフクアリを使わせてもらいましたけど、すごい声援をもらって…。やっぱりサッカーって楽しいと思いましたね」

 普段は当たり前のようにやっていたサッカーができない。県民の方々と苦しい思いをともにしてきた。その中で、自分たちがサッカー選手としてピッチに立てる喜びを改めて噛みしめたのではないだろうか。

 選手たちは様々な思いを巡らせてこの試合に臨んでいたはずだ。目に涙を浮かべながら心境を話してくれた岡本を見て、私はそう思った。

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