偉大な先輩の下で得た自信
それでもU-18日本代表招集経験のある北谷の才能を信じて疑わなかったのが山口の上野監督だった。「個人能力が優れており、1対1に粘り強い選手」と高く評価し、昨季までの主力が健在ながら開幕からスタメンで使い続けてきた。
一方、J2での武者修行を選択した北谷も強い覚悟を胸に山口行きを決めた。初ゴールを決めた岐阜戦が終わった後、「今年レンタルで出てみるというのは自分の強い意思だった」と胸の内を明かしてくれた。
「プロとして1年目、2年目は偉大な選手たちがいて、マリノスで最初は全然自分のプレーができなかったんですけど、やるにつれてだんだん自信もついてきて、去年1試合だけでもナビスコ杯に出られて、そこでちょっと自分の自信というか、できるなというのを感じたんです」
やはり中澤や栗原、ファビオの壁は厚かった。高卒でプロになったばかりの若者が日本代表クラスのDFと対等に渡り合うのはこれまでのJリーグ全体を見渡してもほとんど例がない。しかもW杯に出場した選手が相手となればなおさらだ。
しかし、北谷にとって横浜FMでの2年間は決して無駄ではなかった。毎日偉大な先輩たちのプレーを間近で見て、感じて、そこから多くのことを学び吸収する。この経験があったからこそ、山口でのレギュラー獲得につながっている。
北谷は語る。「自信を持って山口でプレーできるのはマリノスでの2年間があったから」と。そして90分間プレーすると、これまでにない新たな学びが生まれる。やはりピッチの外と中では得るもの、感じるものすべてが違ってくる。それもまた成長に必要な要素だ。
「体力面とかフィジカルは全然違うと思う。その中でサッカー選手として90分間試合に出れるというのはすごく幸せなことだなと、こっち(山口)に来てすごく感じています」と、今季の充実ぶりに明るい笑顔を見せた。