アカデミーで培われたレイソルの財産
もっとも、ユース出身だから、あるいは若いからという理由で先発メンバーを選んでいるわけではない。あくまでも偶然の産物であり、そこには指揮官が掲げた競争原理と、前監督のもとで混乱をきたしたレイソルを再建させるためのメソッドが大きく影響している。
昨シーズンのレイソルは、アカデミーで指導者を歴任し、2010シーズンからはアカデミーダイレクターとして「自分たちがボールを保持し続ける攻撃的なサッカー」という共通コンセプトを確立させた吉田達磨監督(現アルビレックス新潟監督)が満を持して指揮を執った。
ACLでベスト8、天皇杯ではベスト4に進出したが、リーグ戦では中位からなかなか浮上できない。こうした状況を受けて、フロントは「いまの体制では来シーズンに大きな飛躍を求められない」と判断。契約を1年残したまま、吉田監督はわずか1年での退任を余儀なくされた。
新たに招聘されたブラジル人のミルトン前監督は、縦へのスピーディーなサッカーを標榜。球際の攻防では場合によってはファウルも厭わない、激しく闘う姿勢も要求した。
まさに180度異なるスタイルに選手たちが困惑。スタートダッシュに失敗した時点で、フロントは結果よりもピッチ上で展開される試合内容に再び危機感を抱いたのだろう。
再建を託された44歳の下平監督は、それまでトップチームを率いた経験はない。しかし、アカデミー時代に吉田元監督の薫陶を受け、ヘッドコーチとしてミルトン前監督をサポートしている。
アカデミー全体にいまも力強く脈打つポゼッションに対する意識は、下平監督もレイソル全体の財産として尊重していきたいとしている。そのうえでミルトン前監督の遺産であり、ボランチとして活躍した自身の現役時代の代名詞でもある、球際における「泥臭さ」も融合させる。
その結果として産声をあげたスタイルが、FC東京との第6節から幕を開けた5連勝、しかもクラブ新記録となるすべて無失点という破竹の快進撃につながっていく。
そして、左利きを生かして左サイドバックに入ることもあった中山は、元監督のネルシーニョが率いるヴィッセル神戸を2対0で一蹴した第9節から再びセンターバックに戻っている。