対照的だったメッシへの賞賛
スペイン人はドン・キホーテに代表されるような騎士道精神を尊ぶ気質を持っている。それはある意味、日本古来の武士道にも通じるところがあるようだ。
そのような観点からすれば、すでに負けが決まっている、ヘトヘトに疲れ切った相手を小バカにするようなネイマールのプレーは、リスペクトを欠くものであり、『武士の情け』に相反するようなものだといえるのかもしれない。そう理解することにした。
しかしその後、理解したことを再び混乱におとしめるような出来事が起きた。
2016年2月14日に行われたセルタ戦で、メッシはPKを直接シュートせずに、ボールを横に出し、スアレスが走り込んで決めた。ゴールキーパーを小バカにするようなトリッキーなプレーだった。
試合は後半36分であり、3対1でバルセロナがリード、ほぼワンサイドゲームと言ったような状況だった。そのようなときにこのようなプレーをすることは、果たしてリスペクトを欠いたものではないのか?
これはかつてヨハン・クライフがアヤックス時代にやったこともあることから、クライフに対して敬意を捧げるものだとか、意外性がありおもしろいと、各新聞ともネイマールの時のような批判的な取りあげ方をしなかった。
しかし唯一、マラドーナがこのプレーに触れて、「オレが相手チームだったら殴りに行っている」と話している。やはり相手チームの選手にしてみれば、相当にムカつく、リスペクトを欠いたプレーだということだろう。
またスアレスと得点王争いを続けるクリスティアーノ・ロナウドはスアレスに入れさせたことから、「なぜこのようなやり方をしたのか、オレにはわかる」と怒りのコメントをだしていた。しかしこのような反応はスペイン全体からみれば、ごく一部例外的なものであったようだ。
なぜネイマールが批判され、メッシが批判されなかったのか。