スペインで受け入れられなかったスペクタクル
さらにピケもネイマールを庇おうとはしなかった。
「スペクタクルなプレーなど、あの状況では必要がなかったんじゃないかな。彼らは負けていたからとても熱くなっていた。そんなときにあのようなプレーは必要なかったんだ」
スペクタクルなプレーを好むスペイン人、そんなファンが多いからこそ、リーガ・エスパニョーラが世界一魅力的なリーグになっていると信じていた私にとって、この出来事は少し意外だった。
事実、これまでにもロナウジーニョのような選手のプレーは歓迎されたし、1対1でまた抜きなどをすえば、観客も喜んでいた。そのスペインでなぜネイマールの遊び心のあるプレーが受け入れられなかったのか。理解するのは難しかった。
マドリーの新聞であるマルカ紙などは、翌日、読者に対して「ネイマールのプレーはリスペクトを欠くものだと思うか?」とアンケートを行ったところ、「そうは思わない。フットボールのマジックであり、フットボールを楽しくさせるものだ。パスだけじゃつまらないものになる」とか、「フットボールは美しく、そして楽しむものだ。このようなプレーが毎試合あった方が楽しい」という答えも多かったと報じている。
多分にマルカ紙の読者ゆえ、バルサに対する批判があることも事実だが、観客からすれば、やはり楽しいものは楽しい。そのように考えるスペイン人がいることを知り、少しは安心した。
もちろん選手間では、リスペクトということで問題視されたのだろう。このリスペクトという観念は、よく対戦前に強いチームが弱いチームに対して使う言葉でもある。
例えば「僕らは相手チームに対してリスペクトを持ってしっかりと戦いたい」といったような言い方をする。裏を返せば、相手に辱めを与えるというのは避けるべきだということになる。
【次ページ】対照的だったメッシへの賞賛