香川を追いかけ回した長谷部。「1タッチした後ですぐ……」
執念に屈した。2016年5月7日のブンデスリーガ第33節、ボルシア・ドルトムントはアウェイでフランクフルトと対戦する。
フランクフルトはなりふり構わなかった。このまま16位で終われば、入れ替え戦に回ることになる。残り2戦の結果次第では、自動降格する。
試合が始まる前には、スプリンクラーを作動しなかった。水を撒かないことでBVBのパス・スタイル=持ち味を少しでも削ろうとする。キックオフの笛が鳴れば、5-4-1でタイトな守備を敷く。長谷部誠は「僕らはとにかく真ん中を閉めてやっていた」と言う。
恥も外聞もかなぐり捨てたフランクフルトに対して、ドルトムントは中盤がダイヤモンド型の4-4-2で挑んだ。
香川真司はトップ下で先発する。しかし後半戦で主流だった2シャドーとは違って、1人でトップ下を務めることとなった。つまりバイタルエリアでのプレッシャーをモロに受けることになる。香川は「前半は特にやりづらかった」と言う。
「もうすごい相手のプレッシャーを感じていましたし、ボールを受けてもCBとハセさんとね、相手のダブルボランチが、1タッチした後ですぐに狙いに来るし……」
香川の足元に入ってくるボールに対して、オチプカ、アブラハム、ルスの3CB、そして長谷部とフスティのダブルボランチは抜け目がない。フランクフルトの守備陣からすれば、的を絞りやすかっただろう。マークしたトップ下の香川について、長谷部は「僕らがやっているサッカーはかなり引いていて、スペースがなかったので難しかったとは思います」と語った。
つまり、ドルトムントの布陣変更とフランクフルトの守備が相まって、香川から安定したプレーとダイナミズムを奪ったのだ。
「ちょっとでもコントロール、タッチが崩れるとボールを失う可能性があったので、あまり受けるチャンスはなかったですし、受けても効果的なプレーはなかなかできなかったです」(香川)