“タイン・ウィア・ダービー”はプレミア屈指の熱さ
巷では両古豪の共倒れはないとの見方が強い。それでも、来季はプレミアを代表する地元対決の1つである“タイン・ウィア・ダービー”が見られないことに変わりはない。
その熱さは、ユナイテッドとシティによる“マンチェスター・ダービー”や、リバプールとエバートンの“マージーサイド・ダービー”にも引けをとらない。両市民の間には、ピッチ上での初対決が実現した1883年よりも遥か昔、石炭取引の利権を争った17世紀から対抗意識が燃えているのだから当然だろう。
タイン・ウィア・ダービーは、今季の2試合もそうだったように週末午後一のキックオフが定番。両軍サポーターが試合前からアルコールを満タンにして、ライバル意識の炎に油が注がれているような状態で集結するリスクを抑えるための配慮だ。
一種独特の観衆暴走が起こったのも同ダービーでのこと。2部時代の26年前、昇格を懸けたプレーオフ準決勝第2レグでの87分にサンダーランドがリードを2点差に拡げると、ニューカッスルのファンが乱入。ピッチ上で暴力に訴えたわけではなかった彼らの狙いは試合無効と再試合にあった。結果的には失敗に終わったが、そこまでして勝ち負けに拘らずにはいられなかったのだ。
降格はあっても優勝はない年月を重ねるようになっていることから、ニューカッスルとサンダーランドの両市民にとって、地元対決の「ビッグゲーム度」は一層高まってさえいるはずだ。
筆者の友人には数年前からマンチェスターに住む「ジョーディー(ニューカッスル出身者)」がいるが、故郷の聖地セント・ジェームズ・パークのシーズンチケット保有者でもある彼が、毎年、真っ先に日程を確認して観戦予定を組むアウェイゲームは、ニューカッスルが北西部のマンチェスターにやって来るユナイテッド戦やシティ戦ではなく、北東部でスタジアム・オブ・ライトに乗り込むサンダーランド戦であり続ける。
ニューカッスルが今季の残留争いで生き残ったとしても、心に穴が空いたような心境でタイン・ウィア・ダービーのない来季を過ごすのではないかとさえ思えてしまう。