横浜FM戦の反省材料を活かして
最後に、広島撃破を後押しした目立たぬポイントとなったのが、クリアの質ではないだろうか。1-5で大敗した第7節・横浜FM戦後の会見で、名波監督は怒りをにじませた口調でこう述べた。
「クリアの質とファウルをするエリアやタイミング、それから奪った後のファーストプレーの質。この3つを今シーズンのテーマに挙げてやっているんですけど、この3つが全て悪かった」
相手の対策を実行する以前の問題が、横浜FM戦にはあった。だが、広島戦はヒヤヒヤするようなクリアミスがほとんどなかった。“クリアの質”というのは見過ごされがちだが、すべての試合がチャレンジャーである磐田にとって、この部分は放置してはおけない。
味方の攻撃に繋げることや、一度はっきりとプレーを切ることだけでなく、自分たちのラインや陣形を整える時間を作り出す上でも、クリアへのこだわりは地味ではあるが大切な作業だ。
櫻内渚は、横浜FM戦で不用意なクリアミスからCKを与え、チームはそこから失点を喫している。この試合では後ろ向きのプレーを連発し、相手のショートカウンターの温床になっていた。それもあって前半途中で交代となり、その後はスタメンから外れている。そうした中で広島戦は81分からピッチに立つと、堅実なプレーで試合を終わらせた。
昨季のJ王者への勝利は勝ち点3以上の価値があった。ヤマハスタジアムのピッチには、単なるミラーゲームでは括りきれない戦いを実践し、最後まで集中力を切らさず一つひとつのプレーをやり遂げたイレブンの姿があった。
(取材・文:青木務)
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