「変な疲れ方をした」というボランチの献身
試合翌日、宮崎智彦を呼び止めた。中盤の底で常にポジションを微調整しながら相手のパスコースを消し続けた29歳が、この勝利をどう振り返るか気になった。背番号13は試合の流れを読みながら、周囲にも気を配りながらプレーできる選手だ。名波監督も「サッカーをよく知っている」と高く評価するその戦術眼は、チーム全体の出来も左右する。
そんな宮崎は、広島戦で12.101kmを走りきっている。彼にとって今季一番の走行距離だが、このボランチは「距離的にはそんなに走っていない」と感じていた。
実際に走った距離とコメントは合致しないが、続く言葉に耳を傾けると広島戦で宮崎、山本康裕のダブルボランチが果たした役割が見えてくる。
「3歩くらい横に動いたり、前に出たりというのをずっと繰り返していたんです。康裕でさえ珍しく『足攣った』ってゲーム中に言っていましたし。スプリントで出て行ったということもあったけど、それ以上にこの辺(自身の周辺を指して)を動いているだけがキツかった。ボランチもそうだし、全員が『少しでも』という駆け引きをしていた」
名波監督は「リアクションに見えるかもしれないですけど、一つのアクションだと捉えていただければ」と話しているが、宮崎も「相手が出てくるまで待っていようという感じでもなかった。逆に相手の後ろの方は回させていて、ボールが入ってきたところに網を掛けようとか。そういうイメージもしていたし、声かけもできていた」と充実感を口にした。
試合前、「広島戦は頭も疲れそう」と話していたが、単純な身体的疲労だけではない、「変な疲労がありましたね」と笑顔を浮かべた。
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