「チームのためにもっともっと貢献したい」
ACLで猛威をふるい、かつては大会得点王にも輝いた快足ストライカーは「おかげさまで以前日本のチームと対戦した時はゴールをかなり決めたので、すごく嫌な相手だったと思う」と笑みを浮かべながら冗談交じりに話した。
そこには日本で戦う上での決意も含まれている。「FC東京でも同じく相手は日本のチームになるし、結果を出したい。プレースタイルも含め、29歳だけど自分の中ではまだ若く、まだまだいけると思っている。コンディションがもっと上がってくればもう少しいいプレーができる。かなり本来の自分に近づいているので、これからはもっといけると思う」とムリキはさらなる質の向上に自信を見せた。
そして「今日に関しては僕の体力が完全でないところで周りが僕の分も走ってくれたことに非常に感謝したい」と自分を受け入れてくれたU-23の若手たちをねぎらう言葉も忘れない。
中国や中東でプレーした時期が長かったため、チームの中心であることしか受け入れないエゴイスティックなイメージを想起させたムリキは、全く正反対のプロフェッショナルなストライカーだった。本人の言葉や周囲の証言からもストイックに自分を見つめ、己と戦う姿が見て取れる。
「トップチームはなかなか厳しい状況にいる。僕個人としてもチームのためにもっともっと貢献したい。今日ゴールを決めたことはすごく嬉しいけど、僕の一番の目標はJ1でゴールを決めてチームに貢献すること。厳しい状況だが、それをみんなで乗り越えていきたい」
ムリキは心の底からプレーすることを欲し、何よりもチームを助けるゴールを欲している。Jリーグで初めてのゴールはJ3で、しかもPKだったが、近いうちにJ1で持ち味のスピードを生かしたゴールを決めて見る者の度肝を抜いてくれるはずだ。
城福浩監督率いるFC東京のトップチームはリーグ戦で厳しい戦いを強いられている。そこに頂点を知るムリキが本物のプロフェッショナリズムを注入すれば、一筋の希望が見えてくるかもしれない。特大のポテンシャルを秘めた“黒豹”は悩める青赤の救世主となるべく虎視眈々と牙を研いでいる。
(取材:文:舩木渉)
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