社長が受け取ったショートメール
開幕から7試合を終えて3分け4敗。5シーズンぶりに挑むJ1の洗礼を受けて、ファーストステージの下位に低迷していても、アビスパ福岡の川森敬史社長は不安を感じていなかった。
アビスパ一筋で12シーズン目を迎えたレジェンド、キャプテンのFW城後寿と時折交換するショートメール。携帯電話の画面に映し出される文面から、悲壮感がまったく伝わってこなかったからだ。
「僕はアナログ派の人間なので、ラインなどは使っていないんですよ」
照れ笑いを浮かべながら、川森社長はつい最近、城後から届いたショートメールに綴られたニュアンスを明かしてくれた。
「やりたいことが少しずつ形になってきています。チームの雰囲気はいいし、みんな前を向いているので、あとはきっかけだけです」と――。
迎えた4月29日。FC東京のホーム、味の素スタジアムに乗り込んだファーストステージ第9節で、井原正巳監督はシステム変更に強いメッセージを込めて、流れを好転させる「きっかけ」をもぎ取りにいった。
3月19日のジュビロ磐田戦以来となる「4‐4‐2」システムの採用。それまでの「3‐4‐3」システムからの変更を、ボランチの末吉隼也はこう受け止めていた。
「最終ラインが3枚のときはちょっと引き気味で、後ろが重くなりすぎていたというか。ボールを奪った瞬間に前線の枚数が少ない場面が多く、攻撃がなかなか上手く機能しない場面が多かった。4枚にすることで受け身に回る守備ではなく、前線から積極的にプレスをかけて、パスコースを限定するアグレッシブな守備で主導権を握ろうと。守備のリスクは多少増えるかもしれないけど、それでもリスクを冒してでも攻撃にもっていかないといけなかったので」
リーグ戦では3試合連続無得点。熊本県を襲った地震による影響で消化試合がひとつ少ない状況ながら、FC東京戦前の段階での総得点4はリーグワーストだった。
一方で総失点9は6位タイの少なさで、1試合で3失点以上は許していない。守備陣が踏ん張っているからこそ打開策を講じたわけだが、4バックへの移行は決して奇策ではない。