結局は個人技頼みのミラン。4-3-1-2を強要した結果3失点
もちろんこれは、強引に点を取る必要を感じた時点で本田に信頼が置けなかったという証でもあるだろう。スペースの消された前半、個人技でマークを引き剥がし、エリアに割って入ってシュートをねじ込む強引さは確かに見られなかった。周囲との連携からスペースへと流れ、ゴールへ迫る本田のようなタイプにとっては苦しい。そういうところを理由に、「トップ下としては物足りない」的な批評をしてくるイタリアの地元紙はきっとあることだろう。
だが、『結局個人技』というのなら、連携が前提となる本田を使って4-3-1-2をやらせたという意味は何なのだろう。第一、スペースを奪われて動けなかったのは前線の2トップも同様なのだ。相手DFを押し広げるために必要なのはチームとしての動きだが、これが欠如していたのが苦戦の原因だったのではないだろうか。
後方からのビルドアップの時点ですでに遅れ、前線にパスは通せない。サイドを使おうにも、カウンターが怖いからサイドバックも上がりをためらう。または上がったところで後方からクイックにパスが出てこない。パスが散らせず、相手DFが密集する中、そこを抜いてチャンスを平然と作る化け物は、少なくとも今のミランにはいない。
シニシャ・ミハイロビッチ前監督は、4-3-1-2で組み立てられなかった限界が分かったからこそ、4-4-2にした。それをトップの一存で強引に捨てさせた結果、守備の規律まで消え失せた。その結果が、この試合のバカバカしい3失点だ。スクラップ&ビルドを短時間でやれという無茶を任されたブロッキも大変である。
もっともバルディが当たっていなければ、違う試合になった可能性があるのも確かだ。「カルピ戦などはポゼッション率が多くても決定機が作れなかったが、今日は多くのチャンスが作れた」とブロッキ監督はポジティブに捉えていた。ただそれは前半を含めての評価か、それとも3トップで放り込みをした後半の話か。
ジャコモ・ボナベントゥーラの復帰にはまだもう少し掛かる。次の試合で本田を使うかどうかで、本当にどう評価されかのかがわかる。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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