フンメルスに浴びせられた容赦ないブーイング
マッツのために戦う。ボルシア・ドルトムントの選手たちは試合が始まる前に円陣を組んだ。2016年4月30日のブンデスリーガ第32節、2位のドルトムントはホームに10位のヴォルフスブルクを迎える。
「バイエルンに移籍したい」
28日にクラブ公式HPで公表されたマッツ・フンメルスの希望は、ファンからすれば許されることではなかった。試合が始まると、フンメルスがボールを持つ度にブーイングが鳴り響く。スタンドの誰もが指笛を鳴らしたわけではなかったが、主将に対する非難は明らかだった。よりによってマッツは宿敵に移りたがっている。
もちろんこうした状況は、ある程度予想出来たことでもある。
香川真司は言う。
「一番辛いのは彼自身だと思うので、だからこそこういうときは僕たちが、理解を示してサポートをしていかなきゃいけない」
よりレベルが高く、よりタイトルに近い環境を望むことは、プロとして当然のことだ。サッカー選手としての人生は有限で、長くはない。だからこそ、背信とも取られかねない決断を下さなくてはならない時もある。世界を同じく生きる者として、香川も含めたドルトムントの選手たちは、決意を胸に秘めたのだ。
マッツのために――。