相思相愛となった監督就任オファー
田嶋幸三新会長の就任とともに体制が刷新された、日本サッカー協会の女子委員会内でなでしこジャパンの今後が話し合われ、4月25日に高倉氏を後任候補として一本化。翌26日に田嶋会長が了承し、日本協会として正式に要請し、就任会見するスピード決着となった。
候補を一本化していく過程で、新たに女子委員長に就任した今井純子氏は、以前からFIFA(国際サッカー連盟)などの仕事をともにすることが多かった高倉氏に対してこんな思いを抱いていたという。
「いつかはこの方に、(なでしこジャパン監督就任を)お願いするときが訪れるんだろうな」
そして、就任会見に同席した田嶋会長もこんな言葉で新監督の背中を押した。
「みなさんの予想通りというか、この人しかいない、という高倉さんがなでしこジャパンの監督を引き受けてくれたことを、会長としてとても嬉しく思います」
日本サッカー協会を挙げての総意と期待が込められ、高倉氏自身も「満を持して」の思いとともに受け止めたオファー。いわゆる「両想い」の背景には、指導者として高倉氏が歩んできた道がある。
アルベルト・ザッケローニ体制で臨んだワールドカップ・ブラジル大会で、A代表が一敗地にまみれた苦い記憶の余韻が色濃く残る2014年8月。『フットボール批評』誌上で連載していた日本サッカー協会の元会長、岡野俊一郎名誉顧問への取材が、代表監督の選考方法に及んだときのことだ。
次期代表監督としてハビエル・アギーレ氏の就任が決定的だった状況のなかで、日本人監督を誕生させるにはどうしたらいいのか、という問いに岡野氏はこんな持論を展開していた。
「日本の場合は何が一番いいんだということを、議論してくれればいいんです。その結果として、世界の潮流に倣ってクラブが選手を育てようということでもいいし、あるいは女子のように高倉君が元日本代表選手の立場で17歳以下の代表を教えるのもいい。U-17のワールドカップで優勝した選手たちが、20歳以下の代表にいくときに誰が見るのか。私に言わせてもらえば、高倉君がそのままいったほうがいい。
その次になでしこジャパンの選手としてワールドカップや五輪に挑むときは、ジュニアユースからユース経て、高倉君が代表チームを見るのが一番いい流れだと思う。そこで能力的に無理だとなれば遠慮なしに代えなければダメだけど、流れとしてはそれがベスト。トップだけ教えていればいというほどの日本人指導者が育っていないから、選手を育てるのと同じで、U‐17代表から競り上がっていかなくちゃいけない」