一つのサイクルは終わり、「カタール第二世代」へ
そして、この2点に裏付けられたPSGの問題点とは、キープレーヤーが不在だと、ベストなパフォーマンスが出せないということに尽きる。
両試合とも不在だったヴェッラッティ。彼こそが、現PSGの心臓だ。この小柄なMFが、卓越したビジョンでパスをさばくことで周囲の選手の持ち味を十二分に活かしている。彼がチームに与える影響は、スペイン代表、そしてバルサが全盛期だった頃のシャビと似ている。
バックアッパーのラビオは、運動量も豊富で足元のテクニックもあり、リーグ戦レベルなら問題はない。しかしCLで頂点を目指すには、チームに与える要素がヴェッラッティとは違いすぎる。
そして第2レグで指揮官があのような奇策に走ったのも、マテュイディとルイスが使えなかったから。実戦から遠ざかっていたオーリエを起用したのも、ファン・デル・ヴィールとマルキーニョスに右サイドバックを任せることに不安があったからだ。
キープレーヤーの存在に頼り、“黄金のイレブン”でプレーした時でしか最高の結果が出せないのであれば、チームとしての完成度が高いとはいえない。リーグ戦では他クラブとあまりにも差がありすぎるため、その事実をあぶり出してくれる機会がないのが、彼らにとっては致命的だ。
イブラを中心に構築してきた『カタール第一世代』は、今季ピークに達し、そして終焉を迎える。この夏は『第二世代』に向けて、ここ数年以上のリクルート活動が行われることだろう。
ブラン監督の契約は、今年2月に2018年6月まで延長されたが、今回の敗退を受けて、クラブがモウリーニョに接触しているなどという噂も流れている。アル・ケライフィ会長は「来シーズンも指揮をとるのはブラン監督だ」とつい最近も明言したが、ファンの中には、ブランが監督である限りCL4強入りは叶わない、と思っている人も少なくない。
カタール陣営は、当初掲げた「5年でCL優勝」という目標が言うほど易いものではないと実感していることだろう。
クリスティアーノ・ロナウドか、ネイマールか、この夏、どんな大物を連れてくるのか、その部分には、大いに注目したい。
(文:小川由紀子)
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