本田は結局出場機会なし
FWと連動して動くトップ下を求め、この日はケビン・プリンス・ボアテンクがトップ下として起用されたが、彼やマリオ・バロテッリがあまり動かないのでパスコースができない。各選手はカルピの選手たちに比べて個人技は高いからボールキープはできる。しかし、カルピの選手たちの守備の戻りが早いので、結果としてパスを回し損ねてペナルティエリアの手前で攻めあぐねる。これがポゼッション率が異様に高かったことの実態である。
しかも守備や、試合へのアプローチそのものという面はさらに酷かった。前線が守備をしないため、カルピのDFはルーズボールを拾い放題。カバーも手薄だからあっさりサイド攻撃を許した。さらに一部の選手は、軽々しいボールリフトに走ってボールを奪われる始末。シニシャ・ミハイロビッチ前監督ならばこんなことを許していなかったはずである。作るのは難しいが、壊すのは一瞬。ミハイロビッチが厳しい指導で作り上げていた組織もその規律も、すっかり失われていた。
さてその試合でも、本田圭佑は結局使われなかった。ゴール前でのインパクトに欠けることはミハイロビッチ前監督も指摘しており、一点が欲しい場面ではかえって使われないこともあった。トップ下にFW的な動きを要求するブロッキ監督も、本田にはまだ信頼を置きづらかったということか。実際チームが機能しておらず、それでいてゴール前をがっちり固められたい状態では、途中出場の立場でできることは少なかっただろう。
だがチームプレーを成立させるという意味においては、本田にも貢献できる余地は大いにあるはずだ。選手との距離を縮め、細かくパスを交換しながら、味方が仕掛けられるコースにパスを入れる。後半戦で好調をキープしていた本田は、直接ゴールやアシストも絡まなくともそういったプレーでチームの攻撃を演出していた時期もあり、それがチームの勝利につながった時期は確かに存在した。
ただ当然の事、ブロッキが考慮に入れるかどうかは不透明だ。単純にフィジカルコンディションという点でも、「ブランクが響いている」と指揮官が認めざるをえなかったボアテンクよりは確実に動けたはずなのだが…。
ミハイロビッチが本田を重用した背景にはそういった判断もあったはずだが、果たしてブロッキに同じことができるだろうか。
(取材・文:神尾光臣)
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