上昇気流に乗ったことで見えてきた新たな課題
74分。ヘルタは、右サイドでヴァイザーからカルーへのパスを、フンメルスにカットされる。すぐにカルーが奪い返したが、香川、ロイス、ラモスの切り替えは早く、ヘルタのDFラインにプレスを掛ける。
ラモスがブルックスを潰して、ショートカウンター。ヴァイグルのパスに、香川が抜け出す。折り返しを、ロイスがきっちり決めた。2-0。プレッシングとゲーゲンプレッシングが機能して、ヘルタに自由を与えない。
その意味でドルトムントは、1つ、階段を登ったと言えるだろう。もちろん、チャンピオンズリーグのような舞台で同じことができるかは分からない。しかし3バック+2シャドーでBVBはヘルタを圧倒した。後半戦に入ったばかりの頃は四苦八苦したフォーメーションで、ポカールの決勝進出を決めた。
83分。香川が左のロイスにパス。ロイスがエリア内をドリブルで崩して、折り返しをムヒタリアンが押し込む。3-0。ドルトムントがヘルタを下す。決勝の相手はバイエルンである。
そして香川もまた1つ、階段を登ったのではないだろうか。チームが完成度を高めるのと比例して、2シャドー、つまりトップ下をいよいよモノにしつつある。
同時に香川は「今日は点を取りたかった」と言う。55分には、左のシュメルツァーからの折り返しに、エリア内に入っていったが、プラッテンハートにクリアされる。60分には、ショートカウンターに飛び出して、ロイスの右からの折り返しに走り込むが、これもプラッテンハートに阻止される。
トップ下に手応えを得てきたことで、香川は次のステップも見据えているようだ。後半のチャンスについて「あと一歩っていうのが何回かあったので、まあ、しょうがないですけど、そこでやっぱり、決め切る力が欲しいですね」と口にした。
自らを取り巻く停滞していた流れが、上昇に転じつつある中で、香川は新たな欲を、ホロリと口にした。次は「決め切る力」をモノにする。
そうした次の課題を見据えていることが、香川が苦難を乗り越えた、何よりの証なのかもしれない。
(取材・文:本田千尋)
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