経済権を残して選手を送り出す方策
稲川氏によれば、今やブラジル人選手のみならず日本人選手が海外移籍をする時でも「次の移籍の時にパーセンテージが戻ってくる契約をしているJクラブも出てきた」のだという。
そうした傾向について稲川氏は「クラブは経済権(エコノミック・ライツ)を持って良いわけだから、自分たちの納得する数字でなかったら我慢する必要はないわけです。でも、選手を潰さないためにもそこで海外に出してあげる、その代わりもう一つの先の移籍が発生した時には自分たちの権利はこうなんだ、というように上手く交渉することは大事だと思います」と述べる。
最後に外国人選手ではなく日本人選手の中東移籍の可能性について稲川氏に聞いた。稲川氏によれば「日本人選手に対する中東からのオファーは頻繁に来ていて、日本代表入りして少し名前が上がるとすぐに来ます」とのこと。
「要はアジア枠で使おうとするからです。近年はやたらとセンターバックの日本人選手が欲しいと言われるので、おそらく田中マルクス闘莉王選手にはしょっちゅうオファーが届いていたと思います。
でも、私は中国より中東の方が難しいと思っています。まずは気候が暑すぎるし、生活習慣が違いすぎます。ドウグラスも含めて日本でクライアントだったブラジル人選手が中東に行っているので話しを聞きますが、『人生の喜びがない』と言っています。
綺麗な街だし、面白いけど人工のものはすぐに飽きるみたいです。逆に、中国は国内世論があるので簡単ではないですが面白そうですよね。北京周辺を回った時も『こんなに立派なのか』と驚いたことがあります。東京が未来都市というイメージになっていますが、北京も十分すごいですし中国にはそれ相応の歴史・文化がありますから」
(取材・文:小澤一郎)
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