満額に届かなかった広島からのオファー
現在、稲川氏は自身が代表取締役を務める株式会社スポーツ・ソリューションに日系ブラジル人スタッフを3名常駐させ、Jリーグでプレーするブラジル人選手に万全のサポート環境を整えている。
そして「日本に連れてくる前に直接会って話しをしますし、ブラジルは欧州出身の選手と違って奥さんが面倒なことが多いので」と前置きした上でこう続ける。
「うちのスタッフには選手の家族のケアをしっかりさせています。クラブとしてそういうことをやっているJクラブもありますが、通訳にしてもやれることとやれないことがあります。
クラブの中だからできること、外だからできることの両方あるわけで、通訳だってクラブの人間だから腹を全部割れないということもある。うちのスタッフはブラジル人が日本で生きていくためのサポートをしてもらっています。当たり前ですけど、そういう安定性をもたらすことが大事だと考えています」
「ブラジル人でも鍛えれば伸びる」という稲川氏の持論の下でようやく開花したドウグラスに対して、広島は徳島が持つ51%のエコノミック・ライツを買い取るオファーを提示する。クラブW杯3位で入った賞金を使ってオファーの増額も行われたようだが、それでも「満額には届かなかった」と稲川氏は説明する。
「広島も自分たちの誠意を見せていましたが、昨季終了前から色々なオファーが徳島には届いていたようです。全てのオファーを知っているわけではないですが、徳島の強化部からすると『なぜドウグラスのようないい選手がレンタルで広島に出ているの?』と周りから言われて『他に売らなければ』という状況にはなっていたと思います。
50万ドルで買った選手を300万ドルで売っているからいい商売だったことは間違いありません。半分はトンベンセFCに持って行かれますが、それで徳島が新しい予算を持ってやれるということはいい話です」