本田のこれまでの努力は無駄になってしまったのか?
もっともプレビューにも書いたが、戦術的なことも所詮建前で、別の陰謀論を勘繰らざるを得ないのがたまらなく虚しい。ともかく、ブロッキを推した人間にとって、本田もまた評価の対象外だったということなのだろうか?
確かに1ゴール3アシストという数字は少ない。だが一度はスタメンを外されながら、這い上がってチームのために尽力し、戦術的にもバランサーとして機能していたという事実があり、チームメイトからの信頼も寄せられていたはずだった。なのになぜ、という印象は、試合中ずっと拭えなかった。
インテンシティの低いプレス、再び間延びした距離感、結局中盤省略に走るパス回し。これまでの本田の努力、そしてそれを評価して活かしたミハイロビッチ監督の仕事を潰してこれなのか、前半戦はともかく後半戦のパフォーマンスは否定するほど意味のないものだったのかと、非常にやるせない気持ちになった。
「もっとも、ミハイロビッチ監督を勝たせられなかったのは僕らのせいだ」とルカ・アントネッリは語っていた。本田を始め選手には、やはり今の状況でどう努力するかが求められている。
スタンドから見る限りでは、味方のゴールや勝利に本田は嬉しそうにしていた。モチベーションを下げているようには感じなかったし、試合前の練習(もちろんスタメン組のアップとは別だが)も、他のベンチメンバーの輪に入ってハツラツとこなしているように見えた。
「練習ではポジティブなものを見せている。6試合の間に貢献をするチャンスも彼には来るだろう」とブロッキ監督は本田について語った一方、「23人全てに出場のチャンスを与えることはできないのだ」と完全にリザーブメンバーの一人であるかのような数え方もしていた。
状況は厳しく「ブロッキが続投するば本田は移籍だろう」と地元記者たちも予想を膨らましていたが、本田はこれをどう跳ね返すだろうか。
(取材・文:神尾光臣)
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