不得手だった逃げ切りプラン
後半戦に入って、2月、3月には苦しんだ香川だが、4月に入ると前半戦のようなトップフォームを取り戻してきている。このリバプール戦でも終始安定したパフォーマンスを見せた。前半戦とは違うポジションに、適応しつつある。
だからトゥヘルも、今季の大一番とも言えるリバプール戦で香川を先発起用したのだろう。監督の信頼も取り戻してきている。
交代時にBVBのファンは「カガワ・シンジ」のチャントで声を大にして、香川を見送った。つまり、この時点ではファンもドルトムントの勝ち抜けが決まったと思っていたのだ。
しかし後半のアディショナルタイムのことだった。歓喜は悲劇にすり替わる。セットプレーから、右サイドをスタリッジ、ミルナーが繋ぐ。ミルナーがクロスを入れる。ファーサイド。ロブレンが、ヘッドで決める。3-4。
リバプールが、準決勝進出を決めた。
トゥヘルは「ここから何かを学ばなければならない」と振り返る。強いて言えば、今季のドルトムントは“リードを守り切る”という試合展開に慣れていなかったのではないだろうか。
トゥヘルが監督として就任して以来、BVBはブンデスリーガ、DFBポカール、そしてELで快進撃を続けてきたが、快進撃を続けてきたからこそ、拮抗したゲームを逃げ切るというプランが不得手であることを露呈してしまった。
しかし20日には、ヘルタとのポカール準決勝が控えている。そして来季はチャンピオンズリーグの舞台が待っている。苦い味となったリバプール戦の経験が、役に立つ時は必ず訪れるはずだ。
(取材・文:本田千尋)
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