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Jリーグ 9年前

中村憲剛が見る川崎Fの新たな境地。厚みの増した選手層。悲願のタイトル獲得へ

text by 藤江直人

チーム内に生まれた新たな競争

 壮絶な点の取り合いの末に、後半アディショナルタイムに飛び出したFW森本貴幸の移籍後初ゴールで4‐4と引き分けた3月5日の第2節後に至っては、個々の戦術眼を上げるべきだと提言している。

「自分が出したパスの先でどのように展開されていくのかを、(谷口)彰悟にしても(大島)僚太にしても、もっと予測しなきゃいけない。早くパスを出したいからそこに出すのではなく、パスを出すことで相手と味方の立ち位置がどうなるか。

 相手とスペースを見ながら、相手が嫌がることを共有していかないと。だいぶ考えるようになったけど、一人ひとりの自立というものはまだまだ求められる」

 一聴すると厳しい言葉の洪水となっているが、実は表情には笑みが絶えない。勝ち点を積み重ねながら、次節までの練習でさらに成長するためのヒントも得られる状況が、声のトーンをポジティブに弾ませる。

 昨シーズンまでのフロンターレでは、おそらくは感じられなかった好循環はなぜ生まれているのか。チーム最古参の35歳のベテランは、もちろん理由を把握している。

「メンバーが変わっているから、新しい課題がどんどん出てくる。言うなれば競争が生まれている。こういうメンツでこういうサッカーをする、といういままでのフロンターレのイメージが、いい意味で若干なくなりかけている。いろいろな選手を組み込みながら結果も出ている、という感じですね」

 たとえばサガン戦は、中村をトップ下、大久保をワントップに据えた「4‐2‐3‐1」でスタートしている。しかし、上手く機能しないと見た風間八宏監督は、前半早々に「4‐4‐2」へシフトさせた。

 中村を定位置のボランチへ落とし、大島僚太を中盤の右サイドへ、「3」の右を務めていた小林悠をトップへ上げた。さらにサイドを活性化させるために、前半終了間際に大島に代えて田坂祐介を投入した。

「システムを変えても、オレがボランチに落ちればそれほど破綻はしないという読みがあったんだと思う」

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