“攻撃的守備”を完結させるグリーズマンの存在
そして、典型的な守備スタイルと異なるのが21分のプレスを仕掛けた直後シーン。
ネイマールからボールを奪うと、プレスをしかけていたコケとガビは一気に前線へ。カラスコがペナルティエリア外横でボールを受けてクロスの態勢に入ったときには、グリーズマンも含めてすでに3人がエリア内に入り込んでいた。
得点に繋がらないなんでもないシーンだが、複数人が絡む凄まじいプレスで守備に多大なエネルギーを費やしながらも攻撃面でも高いクオリティを発揮している。
前述の通り、支配率、パス本数で大きく下回っているアトレティコだが、ピッチを6分割した最終エリア(相手陣内ペナルティエリアとその両脇)のエリアでプレーした割合は11.25%。バルサは同エリアで7.55%。アトレティコはバルサより深い位置で攻撃を展開できていたということになる。
アトレティコの守備は、失点を防ぐのと同時に得点を奪うためのものでもある。つまり、“攻撃的な守備”といえるだろう。
しかし、この戦術を完結させるためには、やはり強力なアタッカーの存在は不可欠。この試合でヘディングでの先制点とPKによる2得点を決めたグリーズマンがいるからこそ、全選手が迷いなく全力を尽くせる。このアトレティコの“攻撃的守備スタイル”は、弱者の兵法ではなく強者のスタイルである。
この日の結果で、CLベスト4が決定。アトレティコに加えて、レアル・マドリー、マンチェスター・シティ、そしてバイエルン・ミュンヘン。
特に現在ではバルサ以上にポゼッションを極めるバイエルンを相手にしてもポゼッションの価値を崩したアトレティコの戦術が威力を発揮したとしたら、世界のトレンドは一気に絞られるかもしれない。
(文:海老沢純一)
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