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セリエA 9年前

ミラン指揮官解任の真実。傀儡望む傲慢会長による背任に近い嫌がらせ、新監督は操り人形に

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

原因は名誉会長と監督の確執。クラブ内に対立構造

ベルルスコーニ
ミハイロビッチ監督の解任に踏み切ったシルビオ・ベルルスコーニ名誉会長【写真:Getty Images】

 ベルルスコーニ名誉会長とミハイロビッチ監督との確執自体は、かなり前から表面化していた。ことの起こりは昨年10月、指揮官がシステムを変更したことにある。4-3-1-2で結果が出ず、第7節のナポリ戦ではホームで0-4と大敗。守備を固めるべくバランスの取りやすい4-3-3、もしくは4-4-2に移行するが、これが名誉会長の気に障った。

 ベルルスコーニは地元メディアに、ちょくちょくと監督の采配を批判し口出しする。地元メディアもミハイロビッチに「会長の注文は気になりませんか?」と問いかける。ジョークでかわそうと思ったのか、それとも反撃を試みたのか、ある日の記者会見で彼は笑いながらこう言った。

「会長は私の許可を得てサッカーを語っているんだよ」

 しかし自分が一番サッカーを知っていると自負するベルルスコーニは、本気で腹を立てた。そこから彼は、露骨な嫌がらせに入る。ミラン相手に敗れるも内容で追い込んだサッスオーロに対し、わざわざロッカールームを訪問して「素晴らしかったよ」と健闘をたたえた。またアタランタが見事なサッカーをすれば、「彼らはかつての私のミランのようだった」などと褒めた。

 当然、監督解任にも動いた。12月にリーグ戦では勝てず、コッパ・イタリアでもセリエBのクロトーネ相手に不甲斐ない試合をすれば首を飛ばそうとし、その度にガッリアーニ副会長が思いとどめた。

 その後チームは、本田圭佑が4-4-2の右サイドハーフとして先発した12月19日のフロジノーネ戦から復調、1月31日のミラノダービーでは見事に勝利を収めた。それでもベルルスコーニは「残りの試合で全部勝てば監督を確約せざるをえなくなるかも」などとハードルを上げる。だがチームはリーグ戦でしばらく無敗を続け、コッパ・イタリア決勝進出も決めた。

 ただメンバーを固めて戦い続けた反動が、この終盤に来る。故障者の頻発と主力のコンディション低下で、3月は急に勝てなくなった。こうなれば、今度はベルルスコーニが盛んに圧力をかける。4月3日のアタランタ戦で敗れた直後(1-2)、またも解任に動こうとした。だがミハイロビッチ監督が先回りし、フロントには事後承諾という形で強制合宿の実施を決定。この間、チームの混乱回避を願うガッリアーニも「今の解任はリスクが高い」とベルルスコーニを説得していたという。

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