ミハイロビッチ監督、突然の解任劇。その真相とは
13日、ACミランは練習場ミラネッロで、クリスティアン・ブロッキ新監督の就任記者会見を行った。同席したのはアドリアーノ・ガッリアーニ副会長。シニシャ・ミハイロビッチ前監督の首をオーナー権限で飛ばしたシルビオ・ベルルスコーニ名誉会長は、姿を見せなかった。
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を得る3位からは大きく遠ざかり、ヨーロッパリーグ出場権もサッスオーロに勝ち点差を詰められて危ない状態。しかしサッカー関係者の間では「戦力を考えれば限界で、むしろミハイロビッチはよくやっている」という評価の声が大きく、選手たちも続投を支持。いざ解任が発表されると、サポーターズグループも反対の声明を出した。
ガッリアーニ副会長も解任には反対の立場だったと地元メディアでは伝えられているが、会見ではフロントの代表者として話した。「今まではミハイロビッチは良い仕事をしてくれたが、終盤に弾みをつけるためこの決断に至った。決断は一つ、つまりクラブとして一致した決断ということだ」その裏でベルルスコーニ名誉会長は、フェイスブック上の個人ページで強烈な声明を発表していた。
「親愛なるロッソネーロの皆さん。ブロッキ監督就任に関して多くの批判があることを知っています。批判は自由ですし、決断の責任は私にあります。ですが、私のミランへの愛情を疑って欲しくはないのです。私はミランを愛し、ミランとミランを愛する者のためを思って30年間決断を取り続けてきました。その上で、修正も決断します。監督更迭は、プレーの傾向がACミランの歴史にそぐわなかったからです。はっきり言いましょう。ミランがここまで酷いプレーをしたことは、今までなかったことです」
今ではバルセロナやバイエルン・ミュンヘンが攻撃サッカーの最先端を行っているが、1990年代から2000年代前半までトレンドを築いていたのはミランであることは、自他共に認めるところだった。アリゴ・サッキ監督のゾーンプレスで時代を塗り替え、数々のタレントと共に多くのタイトルを獲ったベルルスコーニにとって、ミハイロビッチ監督の守備的なサッカーは許せるものではなかった。そして成績も悪化したところで、プレー内容や美学を重視して凡庸な監督を解任――ということだ。
しかしそれは、この解任劇の表層に過ぎない。プレッシャーに反発する監督との確執、各関係者の思惑、そして実は現場介入以上のものを求めていた名誉会長の欲望と、複雑で奇怪にも思える事情がこの背後に存在していたのだ。