外国人選手も「売る」前提で獲ったほうがいい
こうした状況を踏まえ、稲川氏はJクラブに「ブラジル人選手は特に、中国や中東に獲られる前提でやっていった方がいい」と提言する。
「J1のトップクラブでも、それなりの違約金を設定して、逆に売っていくつもりでいた方がいい気がします。レナトのようにシーズン半ばでの移籍は難しい部分もありますが、日本のチームは中国で動いているような金額には当然ならないのだから、むしろいい選手を育てて売るのが正しいと思います」
日本人選手の中国移籍は中国国内の世論や反日感情などの要因などもあって、まだまだ活性化する兆しはなさそうだが、Jクラブの考え方次第では、レナトの額を超えるようなブラジル人選手の中国移籍があっさりと出てくるかもしれない。そのためにも稲川氏が口にした「育てて売る」意識を助っ人であるブラジル人選手についても持つ必要があるだろう。
「ブラジル人でも鍛えれば伸びます」と断言する稲川氏は、独自のパイプとルートでレナトのような「日本で磨いて高値になる安い原石」を引き当てる敏腕エージェントだ。だからこそ、最後にJクラブにこうアドバイスもする。
「中国は強豪クラブの“ブランド”(エリート選手)を獲れるかもしれないけれど、ブラジルにはそれだけ選手の数がいるわけだからビビる必要はないというか、むしろ勇気を持ってポテンシャルある選手を連れて来たらいいと思います。なんでサンパウロやコリンチャンスじゃないとダメなの? そうじゃないでしょという感じです」
(取材・文:小澤一郎)
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