ブラジル以外の南米の国は日本を見ていない
Jリーグ開幕前からサッカービジネスに従事すると同時にブラジルのマーケットに自ら足を運んでJリーグにおける「ブラジル人選手」のブランド構築と安定供給に大きく貢献してきた稲川氏だが、「なぜブラジル人かというと、やはり安いからというのが一つ」とその理由を説明する。
「お金があるチームは高いお金を払えばいいし、私にとっての神様はヨハン・クライフなので、できれば欧州からもいい選手を連れて来たい。南米で見ても、今日本の監督たちが求めているサッカーに合うのはアルゼンチン人選手だとずっと思っています。彼らは技術があった上で球際に強く、ハードワークできる。
ですが、ブラジル以外の南米の国は選手の目が日本に向いていないし、クラブにレンタルの発想がない。一昨年、ボカやリーベルを回って、ボカのマクリ会長とも話したこともありますが、一度出してしまうとそこから先の情報がないから出すんだったら売るしかないという考えです。ブラジルは日常的に動いているので情報はあるし、日本でブラジル人が住むための環境や食材、ブラジルのテレビ放映があります」
年間約800人もの選手が国外移籍をする国だけに、ブラジル人選手がJクラブにとって「予算に収まりやすい」外国人であることは今後も変わらないだろうが、稲川氏は4、5年前からブラジル国内での対アジアの優先順位に変化の兆しが出ていることを感じてきたという。
「まず聞かれるのは『支払いはユーロなのか、ドルなのか?』で、次に聞かれるのは『君たちは中国なの? 韓国なの? 日本なの?』という順番での国籍です。今、韓国は少しダメになっていますが、中国とはお話にならないくらい差ができてしまった」と稲川氏は語る。
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